
長く楽しくサロンワークを続けることを目指す上で、美容師自身の健康管理とセルフケアが欠かせない。 今回、健康的な体づくりを習慣づける、人体の理論に基づいて美容師のためだけにカスタマイズされた「美容師ラジオ体操」を紹介する。

森元智也
[HONDA PREMIER HAIR]
Profile
もりもと・ともや/1986年生まれ。北海道出身。北海道理美容専門学校卒業後、2007年に『HONDA PREMIER HAIR』に入社。現在は『HONDA AVEDA Hair & spa』でサロンワークを行いつつ、グループの系列店計7店舗の総店長を務める。

伊藤彰浩
(理学療法士)
Profile
いとう・あきひろ/1987年生まれ。福岡県出身。大学時代に日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの資格を取得した後、専門学校に進学し理学療法士の資格を取得。現在は(株)MEDI-TRAINの代表取締役を務める。「美容師ラジオ体操」の体操監修者。
森元 僕たち美容師はサロンワークの間、朝から晩まで立ちっぱなし。食事や休憩の時間が取れないことも多く、閉店後も夜遅くまで練習をしたり、サロンワークの合間を縫ってSNSを投稿する必要があったりと非常にハードな仕事です。そんな状況で、本当に最高のパフォーマンスができているのかと疑問に感じていて……。自分の体をいたわることで、お客さまにより良いサービスを提供できるようになるのではないかと考えたのがきっかけです。そこで、元々お客さまとして通ってくれていた人体のスペシャリストである伊藤さんに相談しました。
伊藤 僕は人の体についての知識はあっても、美容師が普段どのように働いているかに関しては素人ですから。相談を受けた後はまず、実際にサロンに伺って美容師特有の動きやそれによる負担を観察。その中でいくつかの要素を洗い出し、「美容師ラジオ体操」に組み込みました。
伊藤 イメージしやすい例で言うと、前かがみの姿勢が続くことに起因する肩こりや腰痛、シザーズを長時間使うことで発生する手首や親指の痛みなど。後はSNSが重要視されるようになったことによるスマホの使い過ぎや、カラー剤に混ざっている化学物質が刺激となり、疲れ目を訴える人がかなり多いようです。
森元 サロンでアンケートを取っても、やっぱり肩こりや目の疲れに悩むスタッフは多かったですね(表1)。20代半ばのスタッフが大半を占めているのですが、こんなに若いうちから不調に悩まされていたら、長く美容師を続けるのは難しいだろうなと思って。少しでも長く健康的に働き続けられる環境をつくりたいと改めて感じました。
森元 「美容師ラジオ体操」は美容師の動作を分析することから生み出した、美容師のための体操。ただし、「職業特有の動作を分析して対処する」というのは、他の職業にも応用できることです。いずれはアイやネイルの分野にもこの輪を広げて、ビューティーを司る業界全体に良い波を起こしていきたいですね。

「美容師ラジオ体操」はどのような理論に基づいて誕生し、なぜ美容師の役に立つのか。Q&A形式で具体的に確認してみよう。

とある本の中で出会った「美容師はアスリートと同じ。パフォーマンスを発揮するためには、ケアによってベストコンディションを保つ必要がある」というヴィダル・サスーンの言葉がきっかけです。体に力が入り過ぎていては、お客さまに提供するデザインも硬いものになりがち。心身ともにリフレッシュした状態でサービスを提供すべきだと考えました。

例えば腰痛が起こったとしても、腰椎(腰の部位にある骨)に原因があるケースはほとんどありません。実際には胸椎や股関節といった、隣接関節に可動域低下などの問題があることも多いため、腰をマッサージしたところで改善しない場合も。「痛みの原因となる動作」「痛みを引き起こす部位」「実際に痛む部位」を全て分析し、カバーしているのが美容師ラジオ体操です。

毎日続けるときに負担にならないよう、実際のラジオ体操同様に所要時間は3分程度。その中に、美容師の身体的特徴である重心の左右差、腰・手首・親指の痛み、目の疲れ、呼吸の浅さ、自律神経の乱れといった要素に働き掛ける10種類の体操が組み込まれています。

まずは僕たちが毎朝YouTubeで無料配信していこうと考えています。ゆくゆくは「アイスバケツチャレンジ」のようにInstagramやTikTokなどのライブ配信をいろいろなサロンに交代でつないでもらって、全国に美容師ラジオ体操の輪を広げていくのが目標。SNSを使って、楽しく、気軽に、美容業界に携わる人の健康意識を高めていきたいです。
美容師ラジオ体操を構成する10種類の体操のうち、2種類を公開。1セット20秒程度で終わるため、サロンワークの合間に挑戦してみよう。




※本記事は、月刊『HAIR MODE』2025年8月号から転載した記事です。