プロの美容ぜんぶ。 HAIR MODE online

Feb. 17
経営

職人かたぎ強め、
プライド高めな
スタッフとの向き合い方

美容師のプロ意識の高さやこだわりは、時に「職人かたぎ」と言われ、オーナーや店長など、サロンの運営側を悩ませることも。そんなスタッフの才能を最大限に引き出し、サロンの繁栄へとつなげていくのも店長・幹部の役割だ。その具体的な対処ノウハウを詳説する。

Index

解説/佐々木宏太[人材マネジメントカウンセラー]

指導が難しい?
職人かたぎ型スタッフ

職人かたぎとは、技術に誇りを持ち、仕事に妥協をしない、頑固だが実直な性質のことです。ほぼ全ての美容師が、多かれ少なかれ職人かたぎを持ち合わせています。なぜなら、美容師は職人的な技術によって立脚しており、主に技術の良しあしで価値を判断される職業だからです。また、ほぼ全員が美容師という職人になりたくて進路を志望した方たちです。経営者になりたくて美容師免許を取得したという人は、多くないと思います。

こうした職人かたぎは美徳である一方、組織の中では、以下のような点から、マネジメントに苦労するケースも多いものです。

  • 職人としての共感が先に立ってしまい、職人(技術者)以外の人間の意見を軽んじる
  • 「技術が自分よりも上手」「売上が高い」など、職人として上の人(技術者)の言うことは聞くが、職人として自分より劣る(と思っている)人のことは、後輩はもちろん、同僚だろうが上司だろうが見下す
  • 職人としてのこだわりが強すぎて、自分の技術やセンスを生かすことばかり優先してしまい、協調性に欠ける

次期店長・幹部としてサロンをまとめていく立場のスタッフには、こうした職人かたぎ型スタッフの才能を最大限に引き出す役割も求められます。個性的なスタッフの能力を、サロン全体の発展につなげるための具体的な接し方やコミュニケーション術について、紹介します。

美容師経験の有無を
重んじるタイプ

美容師にとって、美容師経験がない、または経験が浅いマネジャー(管理者)に対する、もやもやした思いは、技術至上主義の強いヘアサロン業界で生じがちな感情です。この場合、マネジメント側はスタッフの態度を察知し、積極的にコミュニケーションを図ることで、関係性を改善できます。具体的には、指示を出した際にスタッフの表情が曇ったり、態度がよそよそしくなったりした場合、そのスタッフが有する専門性を尊重する姿勢を示すことが重要です。例えば、「最近、どのようなカットに取り組んでいますか?」「このようなカット方法もいいかと思いますが、どう考えますか?」「このヘアカラー剤の調合について、どう思いますか?(あなたの意見を聞かせてください)」など、技術的な質問を投げかけ、相手の知識や経験値を積極的に引き出すようにします。

また、自身の悩みや課題を率直に打ち明けることも有効的。相手も「この人も同じように悩み、試行錯誤しているんだ」と、親近感を持ちやすくなります。このような対話を通じて、マネジメント側は自身の知識不足を補うと同時に、相手が持つ専門性へのリスペクトを伝えられます。相手も「自分が頼られている」と感じ、マネジメント側への信頼感を高めることができるでしょう。

互いに歩み寄り、尊重し合う姿勢を示すことで、経験不足から生じる軋轢を解消し、より良いチームワークを構築できます。

plan2506 034 037 001 e1771248614656

ヘタクソな美容師を
見下すタイプ

技術やセンスに対する主観的な評価(上手か、下手かなど)で、態度が変わってしまう美容師がいます。これは、人間関係を悪化させるリスクがあるものです。例えば、技術がうまいと認めた相手の言うことは何でも聞く。一方で、技術が劣ると判断した相手の意見には耳を傾けず、反発する。このような美容師は、自身の成長機会を逃してしまうことになりかねません。

こうした場合は、相手が美容技術以外に興味を持っていることを調べ、話題を振ることで、「この人、センスあるかも?」と思わせることが有効です。例えば、有名建築の話題を持ち出す。あるいは、少しマニアックな(話題の)芸術家の展示会の話をしてみるのもよいでしょう。音楽好きであれば、最新の音楽(K-POPなど)に加え、クラシック音楽を聴いていることを話すなど、相手の好みに合わせつつも、少し角度の違った話題を織り交ぜ、あなたのセンスや知識を示すと効果的です。

これらの話題を通して、相手があなたに興味を持つことで、関係修復のきっかけとなる可能性があります。相手の興味や関心を理解し、尊重する姿勢を示して、良好な関係を再構築しましょう。

plan2506 034 037 002

技術とセンスに
絶対的な自信を持つタイプ

技術への強いこだわりと揺るぎない自信を持ち、独自の美的センスとスタイリングへの強い信念を持つタイプの美容師もいます。常に最先端の技術やトレンドを追い求めながらも、自身の確立されたスタイルへの誇りは絶対的です。

しかし、こだわりが強い故に、他者からの意見や指導を柔軟に受け入れることを苦手とし、周囲に扱いにくい印象を与えてしまうこともあります。サロンワークにおいても、お客さまの要望に耳を傾けつつ、自らの理想とする美の追求を譲らない姿勢は、時にお客さまの期待をはるかに超える感動を生み出す一方で、本来のご要望との間にギャップを生み、クレームにつながるリスクもはらんでいます。

このようなタイプのスタッフと信頼関係を築くには、まず独創的なセンスがどこから生まれるのか、そのプロセスを丁寧に聞き出すことが重要です。「どのような発想でカットされているのですか?」「その独創的なセンスは、どのような経験から培われたのでしょうか?」といった質問を通して、(慎重に、相手へのリスペクトを持ちつつ)内面を探り、共感を示すことで、徐々に相手の心を開いていきます。

さらに、「今後どのようなことに挑戦したいのですか?」といった質問を通して、未来に対するビジョンを引き出します。その計画に対して具体的なアドバイスや提案を行うと、あなたを信頼できるパートナーとして認識しはじめます。情熱や才能を尊重し、共に高みを目指す姿勢を示して、強固な信頼関係を築いていきましょう。

plan2506 034 037 003

ヘアサロンには、さまざまな個性を持つ美容師が存在します。それぞれの特性を理解し、適切なコミュニケーションを取ることで、サロン全体のチームワークを向上させ、お客さまへ最高のサービスを提供しましょう。

Profile
人材マネジメントカウンセラー

佐々木宏太

ささき・こうた/理工学部卒業後、自動車整備士としてキャリアをスタート。その後、自動車のエンジン開発に従事するも、リーマンショックなど時代の波に翻弄され、複数回の会社都合退職を経験。この苦境を乗り越える中で、対人スキルを磨き、個性を尊重するマネジメント手法を確立し、5年連続で社内表彰を受賞。これら経験を活かし、人材マネジメントや製造業に関する執筆活動を行っている。

Recommend

Ranking