
人生において多大な“力”を割く活動こそが労働であるが、ここ数年でワークライフバランスを見直す人も多くなったと聞く。ヘアデザインが現代人の意識の影響を受けるならば、まずは「働く」をテーマに、社会観の変化を探ってみよう。
監修 近藤裕香[(株)博報堂]
若い頃に培った価値観は簡単には変わらない。現在、中間管理職を担う40代〜50代は、経済の低迷期にやっとの思いで入社し、負荷を掛けられても会社にしがみついてきた世代。対して20代は、転職や副業が一般化し、就職も人手不足によって売り手市場化。1社目は手っ取り早く幅広いスキルが身に付きそうな業界に入り、数年後に自分に合う職種を考えるという労働観が広がってきた。
| 世代 | 入社時 | 特徴 |
|---|---|---|
| 50代 40代 | 就職氷河期 + リーマンショック | 就職に苦労&リストラが横行した時代を生きてきたため、会社に従順。 |
| 30代 | ─ | 柔軟な思考を持つが、ライフステージ的にお金がかかる世代。上下の世代の特徴を併せ持つ。 |
| 20代 | 学生の売り手市場 | 1社に縛られず、自分の人生に会社がどれだけ貢献してくれるかを重視する。 |
「生活定点」とは?
博報堂が1992年から隔年で実施している、「生活者(人間を消費者という側面だけでなく、多様な活動をする主体として捉える)」を対象にした時系列観測調査。生活や消費、社会観などにまつわる質問を20歳から69歳の男女、約2,500人に投げかけ、分析する。
労働観は世代間で差があるものの、若い世代に触発され、40代〜50代も従来より柔軟な働き方を好むようになったという。「生活定点」調査(図1)によると、休みと給料、どちらを重視するかを尋ねた設問では、1992年の調査開始から長年「給料が高い」派が過半数を超えていたものの、2022年の調査では「休みたっぷり」派が逆転し、現在はほぼ半々に。また、「どんな時に充実感を得られるか」という内閣府の調査(図2)では、「仕事にうちこんでいる時」と答えた人は減少傾向になった。社会全体の潮流として、仕事よりもプライベートの趣味や休息に時間とお金、そして気持ちを割きたい人が増えていることがうかがえる。
【図1】 「休みたっぷり」VS「給料高い」の回答率の推移

【図2】 「充実感」に関する回答率の推移
日頃の生活の中で、充実感を「十分に感じている」、「まあ感じている」、「あまり感じていない」と答えた者が対象(複数回答)

「あくせく働く」という労働観が衰退し、プライベートの充足感を求め、自分らしく過ごすことを重視する人が増えている。この変化は、ヘアデザインをまとうお客さま、そしてそれをつくる美容師のマインドにも少なからず影響するだろう。本特集で取り上げる、「軽やかな」「自然体な」表現が求められる要因の1つと言えるのではなかろうか。(編集部)