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Mar. 13
ヘアデザイナー

『OCEAN TOKYO』高木琢也が語る
男が惚れる、男の話

2013年の創業以来、メンズ客の「憧れの的」となっている『OCEAN TOKYO』。その人気サロンをけん引し、自身も多くの男たちから、そして美容師からの「憧れ」を集める高木琢也さんに、「かっこいい男」について聞いてみた。

Index

かっこいい人は、
常に努力を続けているから
かっこいい

interview:高木琢也[OCEAN TOKYO]
photo:Yukie Sugano[CUBISM]

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“今”の時代だからこそ
練習の意味がある

――まずは直球でお聞きします。高木さんが思う「かっこいい男」とは、どんな人物ですか?

高木 スポーツ選手で言えば、打つべきときに打てる人。それってたぶん、めちゃくちゃ練習して、何回も失敗してきた中で結果を出しているっていうことじゃないですか。大事なときに活躍できる“スター”という表の顔の裏側で、人知れずもくもくと頑張っている。そんな人はかっこいいと思うし、やっぱり、常に結果を出し続ける人には憧れますね。

――高木さんも、多くのメンズ客や美容師から憧れられる存在です。これまで、たくさんの努力をしてきたと思いますが、今も意識していることはありますか?

高木 誰にでも、明るく笑顔で接すること。俺、実は人見知りなので自分から話し掛けることって、正直、あまりできなくて。トガったイメージがついちゃってるんですけど、実際に話してみたら、「話しやすくて、こいつ、結構いいやつじゃん」と思われたい(笑)。

そもそも、俺は千葉県の田舎出身なので、原宿まで髪を切りに来るのは結構緊張感があったんですよ。だから、人を緊張させない美容師さんが好きだったし、自分もそうありたいと思う。高校のときの2つ上くらいの先輩のイメージですかね。お客さんとは、「ちょっと年上の兄ちゃん」みたいな距離感を意識しています。

――技術面ではどうですか?

高木 他の美容師よりもいろんなことを試して、めちゃくちゃ練習してる、と思っています。流行しているものは、必ず自分の髪で試しますし。ダウンパーマも、酸熱トリートメントもやりました。あとは、若い美容師の切り方を参考にしたり、テレビに出てる人たちの髪型を見て、頭の中で展開図を引いてみたり。だから、いつ誰が来ても、あらゆる髪型に対応できるという自信はあります。

――今、サロンワークはどれくらいされているのですか?

高木 週3~4日ですね。毎月、一般のお客さんを250~400人は切れるようにしています。美容師って、経営者になるとマネジメントに専念するためにハサミを置くこともあるじゃないですか。でも俺は、ずっとハサミを持っていたいと思ってます。

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メンズ客の「憧れ」を
どう形にするか

――お客さまは、何かしらの憧れを持って高木さんのもとにやって来ます。そうした方たちの願いとか、隠れた思いなどは、どうやって引き出しているのですか?

高木 俺、特に新規の方とはめちゃくちゃしゃべるんですよ。今は、予約がなかなか取れず、常連の方たちを継続的に施術することが難しくなっているため、やや下がり気味ではあるんですが、独立前からリピート率は93%を切ったことがなく、だいたい97~98%をキープしてきました。このリピートの要因の1つは、施術中のしゃべりにあると思っています。

――具体的に、どういう流れで何を話すんですか?

高木 最初は明るくあいさつ。さすがに、「俺に任せろ!」みたいなイケイケの感じではいかないですよ。「どうもー」と軽いノリであいさつした後、まずは「どうなりたいか」を聞きます。そして、次に投げ掛ける質問は「誰にその髪型を見せたいのか」。学生なら、親とか、クラスの友達とか、彼女とか。社会人だったら、クライアントとかが出てきます。その答えが、例えば女子なら、それは奥さんなのか、彼女なのか、振り向かせたい人なのか。振り向かせたいと思っている人に見せたいのなら、どんな人なのかを詳しく聞きつつ、「その人は長くてパーマがかかっている方が好きなのか、それとも、短くてツンツンしている方が好きなのか……」などと探りながら、相手のリアクションを想像してもらう。そうして、自分がやりたい髪型というよりも、見せたい人たちの好印象が望める方向へ導いていくんです。その上で、お客さん自身のファッションの好みやスタイリングはどうしてるか、などをヒアリングし、ヘアスタイルを組み立てていきます。

――「誰に向けてのヘアチェンジなのか」を重視しているのですね。

高木 一番見せたい人に「かっこよくなったね」「かわいくなったね」って言わせたいじゃないですか。大事なのは、お客さん本人が「どうなりたいのか」です。就活で、入りたい会社があるなら、そこに採用してもらえるような髪型を提案しますし。その「どうなりたいか」を掘るために、とにかくしゃべる。お客さんがしゃべりたくないタイプなら、「それでもいいですよ」と受け入れつつも、聞きたいことはどんどん質問します。

――『OCEAN TOKYO』では長年、「髪を切って人生を変えろよ」というメッセージを広く発信してきました。そこには、どんな思いが込められているのですか?

高木 “たかが髪”だけど、切る人・切る場所によっては、「君に似合う髪型って、何十通りもあるんだよ」ということを伝えたかった。

でも俺、「髪を切って人生を変えろよ」とは、たぶん最初に言ってないと思うんです。「高木さんに切ってもらって人生が変わった」と言ってくれるお客さんが多かったんですよね。好きだった女の子を振り向かせることができた、就活でうまくいった、とか。特に就活では、みんな「切りたくない」「黒染めしたくない」って言うんですよ。昔は今より就職も厳しかったから、髪は短く・黒くが鉄則。それなのに、切りたくない・染めたくないというお客さんには、これまで頑張ってきたことを思い出させながら、「ここで落ちたら一生後悔するんだぞ。1~2カ月我慢しよう」などと説いて、やりたくないことをやりたくさせる。

そうしたこともあって、「高木さんのおかげで変わった」と言ってくれる人が多かったので、サロンのキャッチフレーズとして「髪を切って人生を変えろよ」とうたい始めました。こうしたスタンスは、お客さんが教えてくれたイメージですね。「俺が切ったら人生変わるぜ」とは思ってません(笑)。ただ、入社試験に受かりたい人は受からせる自信があるし、振り向かせたい子をその人に振り向かせる自信もある。だって「君より俺の方がいろんな人の髪を切ってきて、経験豊富だからね」とは思っています。

表面的な“いい子”になるな
のスタッフ教育

――こうしたイズムを、スタッフにはどう伝えているのですか?

高木 今はスタッフが200人ぐらいいるので、役員・幹部メンバーを除いて、自分から直接話し掛けることは控えています。でないと、社長に話し掛けられたことのないスタッフが存在してしまうし、その子たちの先輩の仕事を奪ってしまうことにもなりかねない。だから、基本的には「知りたいことがあったら、自分たちから話し掛けてね」というスタンスでいます。

教育的な指導という面では、年に数回、スタイリスト向けの講習会を開いて技術や接客の考え方を話したり、技術展示をしたりします。そこでは、レイヤーがどうとか、グラがこうとか、専門用語をあまり使わないようにして、お客さんの気持ちを想像してもらうことを大切にしています。スタイリングするときのやりにくさだったり、ダウンパーマで小顔に見せる方法だったり。社長というより、先輩として、技術のコツを教えるイメージですね。

――マインドの面ではどうですか?

高木 例えば、何かの受賞式に出席するときは、「バキバキで来い」と。白シャツにお行儀のいいジャケットを羽織ってスマートに置きに行くのではなく、ギンギンにトガって派手に行け、という意味です。ただし、道端でタバコを吸ったり、外部の人に対して態度が悪かったり、というのは絶対にダメ。一見、ガラは悪そうだけど「実はいいやつだな」と思われる美容師になろうよ、ということは常々伝えています。

あとは、スタイル撮影など外部の仕事においては、若手・中堅・ベテランを組ませ、物事の進め方を見せるようにしています。サロンワークだけだと、視野が狭まりがちなので。

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「かっこいい」は
果たして何通り……?

――いま現在、高木さんご自身が努力されていることはありますか?

高木 技術と美容とダイエット、かな。技術は、何か新しい技はないかなとか考えていますが、実際、ないんですよ。だけど、例えば耳周りをどうえぐったら、横顔をシュッと見せられるか、とか、ダウンパーマなら、薬剤をどう塗れば効率よく髪を寝かせられるか、とか。どうしたら、髪の毛を使って人間が痩せたように見えるかを研究中です。美容は、どうすれば肌がきれいになって、目がパチッと見えるのか。こうした情報を、自分の経験談としてお客さんに還元できれば、どちらもうれしいじゃないですか。ダイエットは、腸活とグルテンフリーと筋トレ。スポーツ界や芸能界など、いろいろな業界で活躍し続ける友人たちを見ていると、やっぱり、常にかっこよくあり続けるためには何かしら努力しないといけないんだな、と強く思いますし、お客さんをかっこよくするためには、自分自身がかっこよくならないと。

――最後に、メンズヘアに注力する美容師にメッセージをお願いします。

高木 男をかっこよくするのって、今は何通りも方向性があるじゃないですか。「ワイルド」にも、「スマート」にも、「美しい」にも、「かわいい」にもいける。引き出せる幅がめちゃくちゃ広がってるんだから、「これしかない」とは思わない方がいい。例えばパーマなら、色気のあるワイルドなパーマも、プードルみたいなくるくるの丸いパーマも、仕上がりの雰囲気は真逆だけど、やり方はほぼ同じ。それなら、両方できたほうがいいでしょ? 選ぶのはお客さんですから。「かっこいい」にはいろんなバージョンがあることに気付くと、もっと面白くなります。そして、それが全部できるようになれば、日本にもっとかっこいい人が増えるし、美容がもっと楽しくなるはずです。頑張りましょう♡

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ヘアデザイナー

高木琢也[OCEAN TOKYO]

たかぎ・たくや/1985年生まれ。千葉県出身。早稲田美容専門学校卒業後、東京都内1店舗を経て、2013年、東京・原宿に『OCEAN TOKYO』を設立。現在は、東京都内をはじめ、大阪や神戸、仙台など全国に計12店舗を展開する。

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