
博報堂生活総合研究所による「生活定点」という調査の結果、見いだされた「消齢化」という現象をキーワードに展開している本特集(月刊『HAIR MODE』2025年12月号)。現代の大人心をつかむためにも、まずは変わりゆく時代の気配を感じ取ろう。
※本記事は、月刊『HAIR MODE』2025年12月号から転載した記事です。
監修:博報堂生活総合研究所
「生活定点」とは?
博報堂生活総合研究所が1992年から隔年で実施している、「生活者(人間を消費者という側面だけでなく、多様な活動をする主体として捉える)」を対象にした時系列観測調査。生活や消費、社会観などにまつわる質問を20歳から69歳の男女、約2,500人に投げかけ、分析する。
【消齢化】しょうれいか
年齢による生活者の価値観や嗜好の違いが小さくなる現象
「生活定点」の30年間のデータを分析したところ、生活のあらゆる面で年齢による価値観や嗜好の違いが徐々に小さくなっていることが明らかに。この現象こそが「消齢化」。サロンワークの現場では、どの年代からも華やかな髪色や軽やかさが求められる傾向にあるなど、美容の分野でも消齢化が進んでいると言える。





消齢化は、「能力」「価値観」「嗜好/関心」の3つの変化が複合的に作用することによって進行してきたと考えられる。数十年にわたってじっくり進んできた現象のため、一時的なトレンドではなく、今後も続く潮流として理解しておこう。
昭和の代名詞とも言える『サザエさん』の登場人物である波平は50代。比較すると、現代の50代は見た目も精神面も若いという実感が伴う中、これを後押ししているのが長寿化に加え、生活インフラやテクノロジーの進化だ。ウェブを活用すれば誰もが同じ情報にたどり着き、体の負担なく買い物が可能。筋力アシストが普及すれば、さらに「できる」が増えていくだろう。
「男性が外で働き、女性が子育てに専念する」ような、昔ながらの価値観から脱却した人が増えたのは、現代を生きる私たちの肌感としても明らかなはず。30年前、社会をけん引した50代〜60代は戦争体験者が多く、「すべき」という強い意志がないと立ち行かない世代であったが、現代の50代〜60代は新しいものに柔軟な人が多い「ジーンズ世代」。彼らによって社会から固定観念が減っていったのだ。
「できる」が増え、「すべき」が減ったことで、“年相応”と言う概念に縛られることなく自分の「したい」を追求した結果、他の年代とも「したい」が重なるように。また、インターネット上で年齢を気にせずに交流するさまが見られたり、若い世代は比較的親と仲が良いという特徴もあったりする中、価値観や嗜好が世代間を行き来し、消齢化のスピードも加速していく。
消齢化によって、ヘアデザインのトレンドについても年齢差がなくなっていく時代。とはいえ、年齢を重ねるごとにエイジングの悩みは増えていく。細かくニーズを追求すると、かえって世代による違いは増すのだ。つまり大人客に向けた提案においては、年齢を感じさせないデザイン、そしてそれを実現するテクニックが、今後は一層求められるのではなかろうか。(編集部)
※本記事は、月刊『HAIR MODE』2025年12月号から転載した記事です。