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Mar. 05
経営

美容室経営を受け継ぐ
その2|事業承継・M&Aの基本を知ろう

美容室経営者・オーナーになる方法は、 独立創業だけではなく、「事業承継」という道がある。事業拡大も、自力出店だけではなく、「M&A(合併・買収)」が選択肢の一つとなる。どちらも大きな金銭が動くことからトラブルも生じがちだが、きちんと手続きを進めれば、決して難しいものではない。経営基盤や経営資源をそのまま引き継げるというメリットと、前オーナーの思いを受け継ぎ、さらに発展させるという使命は、事業承継やM&Aならではの特徴であり、やりがいも大きい。そこで「美容室経営を受け継ぐ」と題し、事業承継やM&Aを成功に導くためのポイントを特集する。

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解説:齋藤和寿[M&A・事業承継の成功法を教える専門家]

事業承継・M&Aの基本を知ろう

事業承継やM&Aは、言葉は難しそうですが、実際に行うことは、準備、契約実行、統合と、非常にシンプルです。ここでは、事業承継・M&Aの基本的な流れを整理しましょう。

事業承継・M&Aの全体像

事業承継・M&Aには、大きく3つのプロセスがあります。

01|事前準備プロセス

譲渡する側のオーナーが準備をするプロセスです。大半のオーナーはまず、社内(社員・スタッフ)や親族に引き継いでもらえるかどうかを検討します。その結果、経営者としては能力的に厳しいと判断した場合や、そもそも引き継いでもらえそうな人がいない場合に、初めて外部の第三者への譲渡を考えはじめます。

逆に言うと、外部の人間としてM&Aを持ち掛けられたならば、その企業には社内や親族に引き継ぐ相手がいない(後継者不在)と推測できます。また、企業価値を評価して譲渡価格の基準を算出します。さらに、決算資料や資産の時価査定資料、スタッフの人事にまつわる資料などを作成し、同時に、譲渡後の財務(簿外債務の発覚など)・法務(オーナーチェンジによる契約解除など)・人事(スタッフの離職など)に関するリスクを見積もります。

02|事業承継・M&Aプロセス

譲り受ける側の視点で言うと、相談が持ち掛けられ、話を聞いたときから、事業承継・M&Aプロセスはスタートします。このプロセスは、

  • 事前検討
  • 本格検討
  • 契約、譲り受け

の3つに大きく分けることができます。それぞれの詳細は次回以降で詳しく解説します。

03|統合プロセス

特にM&Aにおいては、ただ株式や事業を譲受しただけでは、2つの企業・事業が別個に収益を上げるだけであり、シナジー効果(スケールメリットや人材交流による生産性向上など)は得られません。それどころか、互いに「異物」として反発し、かえって失客やスタッフの離職、生産性低下などの悪影響を及ぼすこともあります。そこで、事業の譲受後、新オーナーの下、経営、業務、意識、企業文化などを融合し、合併・買収・事業承継の効果を最大化していきます。これが統合プロセスです。統合プロセスは、英語では「Post Merger Integration:PMI」と書きます。Post=後、Merger=合併、integration=統合なので、「合併後の統合」という意味です。M&Aとは、むしろ譲り受けてからの統合が本当のスタートだと言えます。

統合プロセスは、事業承継においても必要です。前オーナーにカリスマ性があった場合などは、スタッフが後継者を後継者として認めず、ほぼ全員が離職する、という事例も珍しくありません。統合プロセスを通じ、新オーナーとしての方針や考え方と、スタッフの意識をすり合わせて、一致団結できる体制をつくっていきます。

M&A・事業承継のプロセス


01|事前準備プロセス
※譲渡するオーナー側の準備

  • 譲渡先の検討
  • 企業価値の評価と企業概要書の作成
    …など

02|M&A・事業承継プロセス

  • 譲渡や譲受に関する事前検討
  • 本格検討
  • 契約、譲り受け
  • …など

03|統合プロセス

  • 経営組織の統合
  • 業務システム・オペレーションの統合
  • 財務の統合
  • 人事・業務制度の統合
  • 取引先の精査・統合
    …など

事業譲渡と株式譲渡の相違点

事業承継・M&Aにはさまざまな手段がありますが、美容室の場合、ほとんどは「事業譲渡(譲受)」と「株式譲渡(譲受)」のどちらかとなります。

事業譲渡は、オーナー個人や法人が所有している、事業に関係する全てまたは一部の資産(土地・建物・設備など)を譲渡します。一方、株式譲渡とは、その名の通り、法人の株式を譲渡して引き継ぎが完了する方法です。法人の場合は、事業に関係する資産は全て法人が所有しているので、いちいち個別の資産を譲渡せずとも、株式の譲渡のみでよいのです。株式譲渡は、法人化している美容室のみが取れる手段です。

事業譲渡と株式譲渡の違いを以下の表にまとめました。

事業譲渡株式譲渡
売り手個人事業主・法人法人
買い手既存のスタッフや親族、新しく美容室を始めたい個人、すでに美容室を始めている個人・法人(事業譲渡と同じ)
譲渡対象美容室事業の全てまたは一部の資産(店舗、設備・顧客名簿、商号など)美容室を運営している法人の株式(店舗や設備などは全て含まれている)
譲渡方法売り手の持つ事業資産の全てまたは一部を、売買契約で譲り受ける売り手の持つ会社の株式を、株式譲渡契約で譲り受ける
契約当事者個人事業主・法人 ⇄ 買い手株主 ⇄ 買い手
従業員との関係新たに雇用契約を締結し直す必要がある雇用契約は法人に残るため、買い手が法人を取得すれば、そのまま継続可能
取引先との関係取引契約を個別に承継・再契約する必要がある(同意取得が必要なケースも)原則、法人との契約関係は
そのまま継続(契約名義も変わらない)
特徴小規模な美容室の売買や一部店舗だけの譲渡に向いている法人単位での経営権移転が可能。法人運営の継続が前提

続きを読む… 美容室経営を受け継ぐ|その3 事業を引き継ぐかどうかを検討し、決断する

はじめから読む… 美容室経営を受け継ぐ その1|事業承継・M&Aは今後、美容業でも加速する

Profile
M&A・事業承継の成功法を教える専門家

齋藤和寿

さいとう・かずとし/就職した銀行でM&Aに出会い、天職と確信。証券会社に転職して上場企業の会社売却などに携わり、M&Aコンサルタントとしての経験を積む中で、「売り手もそのスタッフも安心できるM&Aを提供したい」との思いが高まり、2020年に独立。インバースコンサルティング(株)を設立する。取引累計額は200億円を超える。

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