
美容師の年齢プラス&マイナス5歳が顧客層のボリュームゾーン——。これが、美容業界の定説だ。しかし、26歳の若さで40代・50代・60代の女性たちから絶大な支持を集める美容師がいる。いくら〝消齢化〟とは言え、大人世代から信頼を得ている理由は、そうした社会背景だけではない。
photo:Yuki Ohashi

広瀬和輝[VIEW]
『VIEW』・広瀬和輝さんのInstagramには、大人世代のお客さまの動画がズラリと並ぶ。しかし、初めから大人女性をターゲットにしていたわけではなく、もともとは世代を問わずにショートスタイルを打ち出していたと言う。徹底していたのは、何らかの悩みを抱える女性たちに向けて情報を発信することだ。
「髪質や顔の骨格・パーツにコンプレックスを感じていたり、ライフスタイルの変化によってできる髪型が限られてしまったり。あるいは、白髪やクセ、顔のシワ・たるみといったエイジングによる変化に戸惑っていたり。そうした女性たちを、『美容の力で笑顔にする』というリアルなサロンワークを見ていただきたくて、スタイリストデビュー直後からさまざまなお客さまのビフォー&アフターやカウンセリングの様子などをInstagramで発信してきました」(広瀬さん)
大人世代にショート人気が高いこともあり、そうした等身大の悩みやヘアスタイルが40代~60代の女性たちに刺さり、Instagram経由で来店するお客さまの年齢層が徐々に上昇。ロングだった大人世代のお客さまがショートにガラッとスタイルチェンジをしたり、広瀬さんに髪の悩みを相談しながらすてきに変身したりするお客さまの喜びに満ちた表情が、より多くの大人女性の共感を呼び、さらなる大人世代の集客につながった。現在、総顧客のうち9割は40代以上で、東京や埼玉、神奈川といった近隣エリアの他、九州や北海道など遠方から来店するお客さまも少なくないと言う。
「年齢を問わず、『誰でもきれいになれる』という価値観は、確実に浸透してきているように思います。僕のInstagramが、『40代、50代でもすてきになれる。私もすてきになれるかも』とお客さまが感じてくださるきっかけになっているのだとしたら、うれしい限りですね」
そうして集客したお客さまの期待値を超え、顧客化につなげるために広瀬さんが重視するのは、「未来を予測する提案」だ。
「お客さまのライフスタイルや悩みに沿ったヘア提案は前提となりますが、加えて、次回来店までに髪に起こる変化と、その解決方法をお客さまに伝えておくのです(左欄参照)。髪をバッサリ切った後の変化とか、短い髪の扱い方のポイントとか、美容師ならば知っていること・予想できる範囲のことではありますが」
美容師にとっては〝当たり前〟の情報でも、お客さまにとっては慣れない体験。髪型を変えたお客さまの日常生活を想像し、寄り添う提案こそが、満足度と信頼感の向上、そして顧客化を導く。実際、広瀬さんの来店3回目以上の顧客リピート率は90%と高い。
現在は、店長として教育や店舗運営に注力する広瀬さんだが、プレイヤーとしても「歳を重ねるごとにもっと美しく、ご自身をもっと誇らしく思えるよう、お客さまと向き合っていく」と力強く語る。

広瀬さんが活用するのはInstagram。お客さまのビフォー&アフターを見せるショート動画と、カウンセリングを含めた施術の様子を伝える長尺動画により、ヘアスタイルのバリエーションに加え、広瀬さんとのやりとりやお客さまの生の反応などを紹介している。ポイントは、リアルなお客さまでリアルな情報を発信すること。「SNSで見る情報と同じことがサロンで体験できるという一貫性が大事」と広瀬さん。“集客用”のスタイル写真のみでは、「私もすてきになれるかも」という期待感や想像力がかき立てられないと考えるため。なお、撮影前にお客さまの許可を得るのは大前提。
新規客を再来店につなげ、さらに顧客化するには、カウンセリングが重要。広瀬さんは、お客さまの悩みや要望をしっかりとヒアリングし、隠れた願いまでをも把握してからスタイルを提案する。その際に必ず伝えるのは、「スタイルを変えるとこんなことが起こります」という未来予測と、「こうすれば改善できます」という解決方法。実際、予測通りのことが起こるから、広瀬さんへの信頼感がアップし、リピートする理由ができる。
広瀬さん流カウンセリング(初回の例)
⇒本当は何を求めているのかを探る
(扱いやすさ? デザイン性?)
⇓
例)ショートにスタイルチェンジした場合
⇒「寝グセが付きやすくなるので、しっかり乾かしてから寝てください。付いてしまった場合は……」
※本記事は、月刊『HAIR MODE』2025年12月号から転載した記事です。