
政府は、最低賃金(時給)の全国平均を、 2029年に1,500円へ引き上げることを目標としている。この目標が達成に至るかは不透明だが、物価高騰の社会情勢下にあって、 強い賃上げ圧力がかかっている現実は否めず、美容室経営にも今後、大きな影響を及ぼすことになる。そこで、時給1500円時代の美容室経営と、美容業の今後の在り方について特集する。
「時給1500円時代の美容室経営」の中で、本連載は収益構造の多次元化を提唱した。その概要と意義を強調したい。
解説/美容の経営プラン編集部
再掲となるが、改めて「美容業の収益構造の多次元化」について述べていきたい。実を言うと、各次元に挙げた取り組みは、決して新しいものばかりではない。むしろ、美容隣接メニューや店販などは、古くから取り組まれてきたものである。ただし、現状を鑑みると、これまでの取り組みには、2つの課題があった。
1つ目は、あくまで「首から上の美容」が主役であり、他のメニュー・サービス・物販は脇役という意識。例えば、「店販品を売れば利益が増える」ことは皆分かっている。だが、脇役と考えているうちは、「店販に力を入れるなら、その分カットやヘアカラーに力を入れたい」「在庫を抱えると損失が出る」「店販品を売り急いで、失客したら本末転倒だ」などと、売らない理由を探してしまうものである。
2つ目は、顧客のウォンツと連動していないこと。「他店では、このメニューがよく出ている」との話を聞いて、顧客層が異なるのに導入しては、失敗する。そんな繰り返しで、次第に導入への意欲を失う事例は枚挙にいとまがない。
さて、いま一度「美容業の収益構造の多次元化」に立ち返ると、各種メニューやサービスは、それぞれお客さまの「面」「空間」「時間」「さらなるウォンツへの欲求」において、何らかの役割を果たすことが分かるだろう。この組み合わせを戦略的に検討することによって、お客さま自身はもとより、空間も時間も含めた、全ての美を担う、特別な存在となる。収益改革を行う上では、この「特別な存在」のポジションの獲得が重要なのである。
美容業の収益構造の多次元化(再掲:一部改編)
「収益構造の多次元化」とは、
大きな設備投資などを行うことなく、
既存の美容室・美容師のポテンシャルを
多方面に活用して収益を上げ、
持続的な事業発展につなげること
1次元:美容業の原点…来店したお客さまの、首から上の美容を担当する
「カット、パーマ、ヘアカラー、結髪、化粧、まつエクなどによって、業として容姿を美しくすること」(美容師法第2条など)
2次元:点から面へ…お客さまの全身を担当する(トータルビューティー提案)
3次元:面から空間へ…お店の外へ活躍の幅を広げる
4次元:空間から時間へ…お客さまの365日の美をつくる
もう一つの4次元:時間短縮…業務の効率化・省力化を進め、生産性を高める
⇓
そして5次元へ:ブランドの拡張…
「美容室・美容師に信頼を寄せているお客さまは、次は何を求めるか?」「美しくなったお客さまは、次は何をしたいか?」から始まるサービス展開
例)

次回は…
時給1500円時代の美容室経営
その7|年末商戦を成功に導く戦略
はじめから読む…
その1|時給1500円時代へ向かう社会的背景を受けるのか?
※本記事は、月刊『美容の経営プラン』2025年11月号から転載した記事です。