
政府は、最低賃金(時給)の全国平均を、 2029年に1,500円へ引き上げることを目標としている。この目標が達成に至るかは不透明だが、物価高騰の社会情勢下にあって、 強い賃上げ圧力がかかっている現実は否めず、美容室経営にも今後、大きな影響を及ぼすことになる。そこで、時給1500円時代の美容室経営と、美容業の今後の在り方について特集する。
時給1500円時代の美容室経営に求められることは何か? 小誌は「収益構造の多次元化」へ、戦略的に取り組むことだと捉えている。以下に述べていきたい。
解説/美容の経営プラン編集部
店舗を構えてお客さまを待ち、来店した方の容姿を整える――。
ごく素朴な、美容業の原点と言えるが、お客さまとは来店日以外に美容師として関わることはなく(知人として関わるケースはある)、施術も髪や顔周りが中心だ。このように、来店日だけ・首から上だけの「点」で収益を得るのが、1次元の収益構造である。
ここから脱却し、お客さまの「面」、つまり全身の美を担い、ネイル、エステ、脱毛、リラクセーションなどのメニューを展開するのが、2次元の収益構造だ。
3次元の収益構造は、店内で来店を待つだけではなく、「インターネットを用い、外部へ積極的に働き掛ける」「お客さまの口コミ紹介を喚起し、家族や知人を新規客として獲得する」「地域貢献を通じ、地域になくてはならない美容室になる」など、活動を外(空間)へ展開していくことを言う。
さらに4次元の収益構造では、「時間」が加わる。「お客さまの時間」としては、365日の美に責任を持つためのホームケアや、お客さまのライフスタイルに合わせた施術提案、「美容師の時間」としては、時短や業務効率化による生産性向上が該当する。
そして、美容業の枠を超えるのが、5次元の収益構造だ。「信頼を寄せてくださるお客さまは次に何を求めるか?」「美しくなったお客さまは、何をしたくなるか?」と発想し、健康やカルチャーなど、他分野へ拡張していくのである。
これらは、どの美容室でも大なり小なり取り組んでいるが、今後は「つまみ食い」ではなく、一貫した意思の下、経営戦略として取り組むことが必要である。
美容業の収益構造の多次元化
1次元:美容業の原点… 来店したお客さまの、首から上の美容を担当する
「カット、パーマ、ヘアカラー、結髪、化粧、まつエクなどによって、業として容姿を美しくすること」(美容師法第2条など)
2次元:点から面へ… お客さまの全身を担当する(トータルビューティー提案)
3次元:面から空間へ… お店の外へ活躍の幅を広げる
4次元:空間から時間へ… お客さまの365日の美をつくる
もう一つの4次元:時間短縮… 業務の効率化・省力化を進め、生産性を高める
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そして5次元へ:ブランドの拡張…美容から他業種・業態への展開
「美に関して美容室・美容師に信頼を寄せているお客さまは、次はどのようなサービスを求めるか?」から始まるサービス展開
例)
「美しくなったお客さまは、何をしたいか?」から始まるサービス展開
例)

次回は…(5/21公開予定)
時給1500円時代の美容室経営
その5|美容業の収益構造を改革する「多次元化」
はじめから読む…
その1|時給1500円時代へ向かう社会的背景を受けるのか?
※本記事は、月刊『美容の経営プラン』2025年10月号から転載した記事です。