
「ドリームプラスコンテスト 2025」で グランプリの栄冠をつかんだ、米島 優さん。 コンテストの本質をサロンワークへの還元と捉え、モデルの魅力を100%引き出すために練習を積み重ねた。モデルとデザインにどこまでも誠実に、真摯に向き合い続ける、その思いとは。
2014年にスタートした、(株)ナプラが主催する32歳以下の若手美容師No.1を決めるコンテスト。「フォト」による1次審査と、全国各エリアで行われる「エリアファイナル(5分間の競技と1分間のプレゼンテーション)」を勝ち抜いた精鋭のみが、日本武道館で行われるファイナルステージに立つことができる。技術、センス、そして人間力が試される、若手スタイリストの登竜門とされている。
若手美容師ナンバーワンを決める――。そんなキャッチコピーに惹かれ、昨年初めて「ドリームプラスコンテスト(以下、ドリプラ)」への出場を決めました。美容業界の先輩方とも戦いたい気持ちはありましたが、まずは若手の中で挑戦してみたいと思ったんです。僕が所属する『DaB』には、積極的にコンテストに挑戦し、結果を残している同年代のスタッフがたくさんいます。社内コンテストも盛んで、僕自身も挑戦を続けてきました。しかし、僕は決して器用なタイプでも天才肌でもありません。外に目を向けると、クリエーティブなコンテストで活躍する同世代の作品に圧倒され、正直太刀打ちできないと感じていました。そんなときに目を付けたのが「ドリプラ」でした。
“攻めナチュラル”というテーマは、自分がやりたいクリエーションの方向性とも一致していましたし、これまで『DaB』から出場者がいなかったことも魅力でした。僕にとって「ドリプラ」は、誰も登ったことのない山のようなもの。挑戦すると決めた以上、勝つまでやめるつもりはありませんでした。ただ、僕は自分を“コンテスター”だとは思っていません。コンテストはあくまでサロンワークの延長線上にあるものです。お客さまに自信を持ってデザインを提案するために、まずは業界内で評価を頂きたい。その結果として、「前髪を切るのは不安だけれど、この人なら任せてみたい」とお客さまに思ってもらえたらうれしいですよね。
![グランプリ受賞者 米島 優[DaB]に聞くコンテストへの挑戦 1 e IMG 5016 e1786755395814](https://hairmode.jp/wp-content/uploads/e_IMG_5016-e1786755395814.jpg)
2次審査を通過してからファイナルまでの約5カ月間、1日たりとも練習を休んだ日はありませんでした。ウイッグに向き合い、雑誌を読み込み、15分間にどんな要素を詰め込むかを試行錯誤する毎日。楽しい反面、絶対的な正解は見えず、やればやるほど孤独な日々でもありました。なお、1次審査とファイナルでお願いしたモデルは同じ方です。初めて会った瞬間に運命的なものを感じ、この人の魅力を自分の手で引き出したいと強く思いました。当時、彼女はオランダに住んでいたため簡単なお願いではありませんでしたが、「必ず1位で通過するから、日本武道館(ファイナルの会場)で髪を切らせてほしい」と頼み込みました。美容師とモデルの信頼関係はとても繊細です。デザインを委ねてもらうためには、「あなたのためにここまでやる」という覚悟を行動で示すしかありません。協力してくれる彼女に対して1%も妥協したくなかったので、毎日練習を続けました。ファイナルに向けては、デザインカラーを施したウイッグを15分でカットするトレーニングを重ねました。40頭以上は切ったと思います。360度どこから見てもかわいいショートを目指し、これまでサロンワークや撮影で培ってきたデザインの要素を一つ一つ組み合わせながら磨き上げていきました。
![グランプリ受賞者 米島 優[DaB]に聞くコンテストへの挑戦 2 h IMG 5013](https://hairmode.jp/wp-content/uploads/h_IMG_5013-1024x682.jpg)
グランプリに名前を呼ばれた瞬間は、心からうれしかったです。支えてくれた周囲の皆には感謝しかありません。ただ同時に、「もっとうまく切れたはず」という思いもありました。アフターパーティーの後、サロンに戻って衣装やスタイリング剤を片付けながら悔しさが込み上げてきて、練習用に用意していたウイッグを明け方まで切り直したほどです。
僕は、クリエーションはメッセージだと考えています。評価を頂いたということは、自分のデザインが誰かに届いたということ。受賞後には、直接お会いしたことのない方々からもメッセージを頂き、自分の思いが届いているのだと実感できたことがうれしかったですね。同時に、コンテストはモデルあってこそ成り立つものだとも改めて感じました。ハサミで表現することは、僕ら美容師の生業です。だから結果がどうであれ、モデルの魅力を100%引き出すために全力で向き合いたいし、コンテストに挑戦する人たちにも、そうあってほしいと願っています。グランプリを獲得したことで外部の仕事の幅も広がりました。しかし、常に本気で向き合い続けなければ、「まぐれだった」と思われてしまうこともある。そんな厳しくも正直な世界だからこそ、これからも愚直に努力を積み重ねていきたいと思っています。
![グランプリ受賞者 米島 優[DaB]に聞くコンテストへの挑戦 3 b S 71442469 0](https://hairmode.jp/wp-content/uploads/b_S__71442469_0.jpg)
多くの出場者が顔のアップ(ヘッドショット)で勝負する過去の傾向を徹底的に研究。あえて引きの構図を選び、上部に絶妙な余白をつくることで、パッと見の第一印象で圧倒的な差別化を図った。パンチのある作品が多い中、モデル自身が持つ透明感やはかなさを最大限に生かすため、ヘアカラーはシンプルながらもホワイトとブラックのコントラストで遊び心を効かせて仕上げた。
![グランプリ受賞者 米島 優[DaB]に聞くコンテストへの挑戦 4 c yonejimayu DaB MIX model](https://hairmode.jp/wp-content/uploads/c_yonejimayu_DaB-MIX_model.jpg)
短時間でミディアムからばっさりカット。モデルのやわらかなクセ毛を生かすために、カットラインが際立ち過ぎない理想の水分量で仕上げる練習を重ねた。ヘアカラーはモデルが好きなブラウン、ブラック、赤を配色。自作のファッションと細部までリンクさせて、トータルコーディネートを狙った。
![グランプリ受賞者 米島 優[DaB]に聞くコンテストへの挑戦 5 g 1st](https://hairmode.jp/wp-content/uploads/g_1st.jpg)
ファイナルステージは暖色系のデザインが多い傾向から、あえて寒色系で勝負。“攻めナチュラル”のナチュラルの要素として、衣装はデニムをセレクトして手づくりした。ヘアカラーはホワイト、ダークブルー、ブラウンで配色。毛束の動きまで計算し尽くしたカラーデザインに合わせ、モデルの骨格を最も生かすベリーショートに。
※本記事は、月刊『HAIR MODE』2026年8月号から転載した記事です。