
「売上は増え続けているのに、お金が手元に残らない」「お客さまは順調に来ているのに、月末の口座残高を見てため息をついてしまう」美容室経営者にありがちな、この悩みの正体の多くは「どんぶり勘定」にある。主に個人事業主の皆さまへ向け、どんぶり勘定から脱却し、経営を軌道に乗せるための、具体的な方法を特集する。
「売上はあるのにお金が残らない」という悩みを抱えているならば、その原因は「どんぶり勘定」にあるのかも? まずは、どんぶり勘定とは何か、また、どんぶり勘定が経営上、どのような悪影響を及ぼすのかについて見ていこう。
「どんぶり勘定」とは、一言でいえば、おおざっぱに金銭を取り扱うこと。職人さんの腹掛けに付いたポケットを「どんぶり」といい(ポケットの付いた腹掛け自体を「どんぶり」と言う説もあります)、このどんぶりの中へもらった給金や売上を突っ込み(入金)、商売の経費や日々の生活費を支払う(出金)姿から名付けられたといいます。
どんぶりの中身は外から見えず、自分でさえ、いくらお金があるか把握できません。そのため、感覚で「どんぶりの中にはお金がたくさんあるだろう」と思って買い物をしたら、足りなかったという結果になりがちです。また、商売のためのお金と、生活のためのお金が一緒くたになっているため、どんぶりの中に入っているお金のどこまでがプライベートで使えるお金なのかが、一目では分かりません。結果、収支が合わなかったり、商売のお金を私的に使い込んでいたり、といったトラブルが起こりやすくなります。
現代の商売においては、さすがに「どんぶり」そのものでお金管理をしている人はほぼいないと思いますが、
○商売の入出金を、プライベートの口座で行っている
○レジから食事代など生活のお金を抜いている
といった、どんぶり勘定と同じようなお金管理をしている方は、案外多いものです。左の「どんぶり勘定危険度チェック」で、1個でも該当したら、どんぶり勘定をしている恐れがあります。
| チェック項目 | 該当 |
| レジの現金からランチ代や買い物代を出したことがある | □ |
| 経費の領収書を記帳せず、確定申告前まで箱にため込んでいる | □ |
| 銀行の預金残高が増えていれば、「もうかった」ことの証しだと思う | □ |
| 年に一度の確定申告でしか決算書を確認していない | □ |
↑ 1個でも該当したら、あなたの経営は「どんぶり勘定」かも!?
「毎日予約はそこそこ埋まり、お客さまでいっぱいなのに、なぜか月末の口座にお金が残らない」これが、美容室に限らず、創業期のお店に最も多い悩みです。そして、この原因の多くは、実はどんぶり勘定にあるのです。もし、前ページの「どんぶり勘定危険度チェック」の項目に該当した場合、どんな経営リスクが潜んでいるのでしょうか? その典型的な例を左に挙げました。共通するのは、売上・費用・利益、そして事業の実態が「分からない」こと。そのため、冒頭で挙げた通り「なぜかお金が残らない」と首をかしげるのです。そこで本特集の解説では、お金勘定の「分からない」を、「気付き」「実践して」、「分かる」に変えていくことを目指します。さあ、これからお金勘定の基礎を学び、どんぶり勘定を解消しましょう!
○「レジの現金からランチ代や買い物代を出したことがある」
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レジの金額が合わなくなり、帳簿上の売上高と実際のキャッシュにずれが生じる。
つまり、いくら売り上げたのかが分からない。
※「後でレジに戻しておけば大丈夫」もNG! 無駄なお金の出し入れは、それだけお金勘定のミスを誘発する上、そもそも、レジからお金を抜くようなオーナーは、往々にしてお金を戻すのを忘れ、「レジの金額が合わない!」と大騒ぎするもの。
○「事業用とプライベートの口座を分けていない」
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「事業に必要な費用」と「日常で使う生活費」の境界があいまいになるため、事業でどれだけ利益を得ているのかが分からない。それだけでなく、いずれ生活費を事業の経費に算入して帳簿上の利益を圧縮し、納税逃れをし始める。結果、税務調査が入って、加算税や延滞税を支払う羽目に陥ることも。
○「経費の領収書を記帳せず、確定申告前まで箱にため込んでいる」
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現状の売上・費用・利益の構造が分からない。さらには、領収書には紛失リスクがある。紛失すれば、費用が過小に見積もられるため、「帳簿上ではもうかっているのにお金がない」だけでなく、実態のない利益が膨れ上がり、税金を余計に支払うこともになる。
○「銀行の預金残高が増えていれば、『もうかった』ことの証しだと思う」
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未来に発生する費用が分からない。結果、思いもよらない支払いに直面し、資金ショートに陥るリスクが上がる。
○「年に一度の確定申告でしか決算書を確認していない」
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事業の実態が分からない。もし事業が悪化していた場合、気付くまでに大きなタイムラグが生じる。結果、「気付いたときには手遅れ」になることも。
※本記事は、月刊『美容の経営プラン』2026年1月号から転載した記事です。