
「ケミカル」が示す範囲は広く、全てを網羅し、情報をアップデートし続けていくのは難しい。だからこそ、ここではポイントを絞って学びを深めるのが吉。本記事では、「パーマの1剤と2剤」に絞って基本的な(しかし見逃しがちな)知識を紹介。複雑履歴毛の施術に役立てていこう。
監修:中谷靖章[(株)イングラボ]
パーマ1剤のスペックを確認するときの代表的な指標が、「pH」、「アルカリ度」、「還元値(還元%)」の3つ。これらが何を意味し、何に影響するのかを、再確認しよう。
※以下、ハサミのイラストは、薬剤に含まれている還元剤の割合を示します。

➾閉じたハサミは「SS結合を切る力を発揮していない」もの。

➾開いたハサミは「活性化している(SS結合を切る力がある)」ものを示す。
pH
水溶液中の水素イオン濃度を表す指数。
pH7.0の「中性」を基準に、それより小さくなれば「酸性」、大きくなれば「アルカリ性」となる。
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還元作用のスピード感に影響
基本的に還元剤はpHが高い=アルカリ性が強ければ強いほど、薬剤中に含まれる還元剤が効率よく働き、より多くのSS結合を切断する。結果的に作用スピードも速くなる(ブチロラクトンチオールは除く)。
アルカリ性の場合










酸性の場合










※還元剤の活性度合い
アルカリ度
薬剤に含まれる酸性成分を中和する量を除いたアルカリ性成分の総量のこと。
多くの場合はpHが高ければアルカリ度も高い傾向にある。
また、アルカリ度が高ければ、酸性の成分を加えてもpHは下がりにくくなる。
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還元剤の持続力に影響
アルカリ度が高ければ、中性や酸性に振れにくくなり、pHの高さをキープできる。つまり、還元剤の活性化の「持続力」に影響する。
アルカリ度が高い場合




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アルカリ度が低い場合




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※時間経過による還元剤の活性度合いの変化
還元値
(還元%)
薬剤に含まれる還元剤の割合を、チオグリコール酸の分子量に換算して数値化したもの。
異なる還元剤を混ぜて施術をするときの指標となる。
還元力の強さをコントロールする重要な要素。
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SS結合を還元できる見込み数に影響
切ることができるSS結合の「総量」に直結する。還元%が高ければ高いほど、より多くのSS結合に作用できるし、少なければそれなりの数を切るにとどまる。ただ、実際に還元を進めるためには、pHの力が不可欠。この「数」だけでかかり具合は判断できない。
還元値が高い場合










還元値が低い場合



※還元剤が含まれる割合
スペックの指標は数あれど、やはりパーマ剤の個性に最も強く関わるのが「pH」。ここでは、奥深いpHの世界に今まで以上に深く迫り、実際の施術にどう影響するのか確認していく。

髪にとっても酸性
髪の等電点
髪が最も健康で、安定している状態。等電点のpHは、この範囲の中で個人差がある。また、同じ毛髪の中でも、根元、中間、毛先など、部分によってpHが異なる。
髪にとってはアルカリ性
化学的には酸性の領域。髪の等電点のpHを上回って酸性寄りになると、収れんする。この領域は等電点よりもアルカリ性寄りなので、髪にとってはアルカリ性となる。
髪にとってもアルカリ性
酸性領域のパーマ剤、カーリング料
ベースとなる溶剤に還元剤をミックスし、pHを調整して使用する製品が多いが、pH4.0〜6.0あたりに設定されることが多い。還元剤は、還元力の高いブチロラクトンチオールと、加温によってウエーブ効率がアップするGMTが主に使用される。
アルカリ性領域のパーマ剤、カーリング料
pH8.0〜9.5あたりのものが多い。医薬部外品に使われている還元剤は、チオグリコール酸、システインなどがあり、カーリング料に配合されている還元剤にはシステアミン、チオグリセリン、サルファイトなどがある。
薬剤と髪で酸性/アルカリ性の境目が異なる
上の表でも説明した通り、毛髪は基本的には(健康毛の場合)弱酸性であり、毛先に対しての中性(安定した状態)ともいえる「等電点」という基準がある。そのため、「薬剤そのものの酸性/アルカリ性」と、「髪にとっての酸性/アルカリ性」という2軸で考えなくてはならない。

pHの違いによる「還元力」への影響
グラフは、pH5.0、7.0、9.0の3種類の薬剤における還元力の違いを表したもの。基本的にpHが高ければ還元する力は高くなっている。しかし時間がたつと、アルカリ度の高低によって力の衰え方に差が出ることも。髪へのダメージと求めるデザインとのバランスを考えて、還元力と放置時間を設定したい。
※ダメージレベルを5段階に分けて解説
※ヘアカラーやブリーチ、アルカリ性パーマ、アルカリ性縮毛矯正の施術後1〜2週間は、アルカリ成分の影響が髪に残っている場合があるため、ここでいう等電点になっていないことも

ダメージレベルが低い、すなわち健康毛の場合は、等電点が右ページの表の通り、ほぼpH5.0〜5.5に収まる。多くの薬剤の解説に書かれている「等電点」はこの健康毛の場合のこと。安全に施術することができるが、特に酸性領域では毛髪がほとんど膨潤しないのでパーマかかりにくい。

ダメージ毛になると、等電点がpH4.5〜5.0と健康毛よりも酸性に寄る。酸性パーマでもそこそこ膨潤するので、健康毛に比べてかかりやすい。ただし、アルカリ性のパーマ剤では健康毛に比べて膨潤の度合いがやや高くなるためダメージリスクが出てくる。

ブリーチを繰り返したハイダメージ毛の場合は、等電点がpH4.0〜4.5と、さらに酸性に寄る。こうなると、酸性パーマでもそこそこ膨潤するため、ダメージリスクが低いとは言えなくなってくる。また、毛髪のpHがもともとが酸性に寄っているため、2剤塗布時の酸化不足も心配(2剤編を参照)。
※本記事は、月刊『HAIR MODE』2026年3月号から転載した記事です。