
若手ヘアデザイナーの育成とスキルアップを目指し、厳しい視点での評価を行っている『ヘアモード誌上コンテスト』。時代性があるか、テーマが反映されているか、シンプルに構成されているか、モデルに似合っているか──。これが、当コンテストの審査ポイントとなっている。自分の基礎力を見つめ直したい、力を試したいという方はぜひ挑戦してほしい。
「質感をMIXしたスタイル」は、比較的美容師の個性を打ち出しやすいテーマだと感じています。そのため、今回は期待通りにクリエーティビティーを遺憾なく発揮してくれた作品を上位に選出しました。中でも印象的だったのは、色による温度感や重量感、硬さ・やわらかさといった要素を「質感」として捉え、デザインに落とし込んだものが多かった点です。ただし、ハイトーンを選択する場合はダメージへの配慮が不可欠であり、パサついた仕上がりはテーマにダイレクトに響きます。サロンワークの満足度を上げるという観点からも、引き続き研さんしていただきたいポイントです。
また、面のスリークな部分が広いほどツヤを感じさせるため、他の部分の動きを強めたり、増やしたりしてスタイルを崩すほど、質感表現のハードルは上がります。クオリティーを優先するあまり表現が控えめになっていたり、スタイルとしての成立を重視して無難なスタイルに収まっていたりと、もう一歩踏み込んでほしい作品が見受けられたのは残念でした。コンテストである以上、新鮮さやモデルへの似合わせといった部分で意匠を凝らすのは、最低限意識すべきです。
今月は久しぶりに月間賞が誕生しました。他の作品も、表現の精度という点では一定の水準に達していた印象です。誌上コンテストでは360度の美しさが求められることを、スタイリング系のテーマにおいても再度重視しつつ、さらなる挑戦を楽しみにしています。
ヘアモード編集部


MARINA TSUKAHARA
SHISEIDO(東京都港区)
東京マックス美容専門学校卒(美容歴7年)
町で歩けるスタイルとして成立させるのが困難なテーマでありながら、セットスタイルに見事落とし込んだ発想が新鮮! リーゼントがお題ならばもう少し奇をてらう部分が欲しいところですが、今回は「質感」が主題。毛先はオレンジみと動きの抜け感から温かさを、フロント部分のブロンドからは冷たさを感じる点も、色によって生じる質感の対比を絶妙に表現に取り入れていますね。地毛部分でデザインを引き締め、他は色で魅せるアプローチも、色数を絞ったことでよく洗練されています。毛先が揺れるニュアンスやバックにレイヤーを入れて軽やかさを加えた点も、クリエーティブ過ぎずにオシャレに感じた点も大きいです。左サイドのみ、頭皮が透けている点が気になりましたが、それを差し引いても月間賞だと思います。


TOMOHIRO SAKAMOTO
VISAGE(千葉県市川市)
ハリウッド美容専門大学校卒(美容歴21年)
最近は今っぽさを宿すことにチャレンジしているように感じておりましたが、徐々にその精度が上がっていますね。坂本さんらしさとも言える構築的な表現—今回の場合は左サイドの耳前の美しいカール—の塩梅も素晴らしいです。フロントにデザインポイントを設けると、フロントとバックのデザインが分離しやすくなるところを、カールを生え際1線の分量にとどめて耳後ろまでつなげ、そこから徐々にカール感を和らげて襟足の外ハネにつなげた点もお見事でした。とはいえ、これまでの歴代月間賞を振り返ると、あと一歩新鮮さに欠けました。


NANOKA TOBA
SHISEIDO(東京都港区)
福岡ベルエポック美容専門学校卒(美容歴12年)
タイト&フレアの構成によってテーマをよく意識したことが伺えた作品。何よりハイトーンデザインながら、広がった毛先はパサつきを感じさせず(むしろ、しっとり)、スリークな面のつくり込みも美しいです。ふんわりとした毛先のカール感はドライでつくり込むとアウトラインが溶けやすいものの、毛先にブラックを入れ、ぼけないように配慮した点も考え尽くされていました。全体的にやわらかい印象のため、ブラウンではなくブラックを選んでエッジを加えた点も好印象。サイド~バックの構成が分かる角度が1枚あれば、月間賞だったかもしれません。


KEIJI MIKAWA
VISAGE(東京都中央区)
ハリウッド美容専門大学校卒(美容歴25年)
三河さんの新たな一面も垣間見れた、ひと際攻めたデザインですね。内側をディスコネして、サイドのウエイト位置を高めに設定したシルエットが新鮮で、モデルのシャープな雰囲気によくフィットしています。また、前髪を根元ギリギリまで切り込んだことで、産毛のようなニュアンスを表現し、ピュアな魅力を引き立てている点もすてき。これによって、アンダーの前方に向かう直線的な動きと対比させ、テーマをクリアする手腕もさすがでした。ただ、ハイトーンであれば髪のパサつきには一層気を配るべき。テーマである質感自体が美しく見えません。


SAYURI SUDO
SHISEIDO(東京都港区)
資生堂美容技術専門学校卒(美容歴5年)
スリークな面と顔周りの羽根のような動きで、テーマを大胆にデザインに落とし込みましたね。目元の印象が強調される前髪もチャーミング。耳周りの質感が美しさに欠け、襟足の浮いた真っすぐな質感に違和感。


HARUKO WATANABE
フリーランス
山野美容専門学校卒(美容歴22年)
ワッフル状のウエーブは分量が難しいのですが、さりげなく施した点がさすがです。薄い襟足とオーバーのシルエットバランスもオシャレ。前髪のライン感がポイントではあるものの、つくりが大味に感じました。


MAI SASAKI
佐々木美容院(岩手県花巻市)
盛岡ヘアメイク専門学校卒(美容歴21年)
無彩色のコントラストを取り入れた作品が多かった中、ブルーに挑戦した点がドラスティック。色と質感でグラボブを軽やかな印象に見せた表現は面白いですが、やや襟足のハネ感が作為的でした。


MAKITO KAWAMOTO
資生堂美容室(東京都千代田区)
資生堂美容技術専門学校卒(美容歴12年)
前髪の透け感が自然で、裾のボリューム感ともバランスが良いです。しかし、スタイルとしてはやや無難。動きや質感のつくり分けは見られますが、良い意味での「攻めの川元さん」を感じたかった。