
若手ヘアデザイナーの育成とスキルアップを目指し、厳しい視点での評価を行っている『ヘアモード誌上コンテスト』。時代性があるか、テーマが反映されているか、シンプルに構成されているか、モデルに似合っているか──。これが、当コンテストの審査ポイントとなっている。自分の基礎力を見つめ直したい、力を試したいという方はぜひ挑戦してほしい。
今回は、前髪そのものをどう見せるかという発想だけではなく、そのデザインが生み出す女性像まで意識して制作された作品が多かったように感じます。9月号の特集企画も「女性像」がテーマとなっていますが、今回上位に選出した作品は、目指す女性像とヘアデザインが明確に結び付いたものばかりでした。ただし、女性像が明確なだけでは評価につながりません。モデルが持つ雰囲気や顔立ちにフィットさせ、その人らしさが際立ち、“似合っている”こと。さらに、そんなモデルへのフィット感を土台としながらも、どこかに意外性や遊びを忍ばせて新しさを追求する、作品としての“鮮度”も問われます。今回は、ヘアカラーの配色や質感表現、シルエットの完成度など、あと一歩詰め切れていればさらに評価が上がった作品も少なくありませんでした。
また、バングというパーツが軸となるテーマでしたが、これをただ強調するのではなく、あくまでスタイル全体を構成する一要素として捉え、バックやサイドとのバランスまで丁寧に設計していた作品が多かったことにも、皆さんのデザイン力の高さを感じました。厳しい見方をしても、全体を通して挙げられるマイナス要素は少ないように思います。
月間賞候補が数多く並ぶほど全体のレベルが高く、順位付けには最後まで悩みました。だからこそ、次回も“似合う”を超える新しい表現に挑戦した作品を楽しみにしています。
ヘアモード編集部


TAMAKI KITAGAWA
AND THE BRICKS(神奈川県鎌倉市)
大村美容ファッション専門学校卒(美容歴23年)
正直、最初は要素が多過ぎると感じましたが、見れば見るほどよく計算されていて、深みのある作品! 一つ一つ、評価の理由を挙げていきますと、まずバングにピンク、それ以外はブラックと大胆に切り替えつつも、デザイン的なまとまりを感じた点。これはベースをブロンドにしたことで一体感が生まれたから……だけではなく、配色のランダム具合をリンクさせ、なおかつフロントの根元にもブラックを施す、というバランスゆえだと思います。2点目はバングのレングス設定が絶妙である点。テーマがショートバングの場合、多くの人がエッジィに仕上げようと短く切り込むはず。そこを一歩俯瞰して眉毛ギリギリにとどめた点がさすがでした。これより短い場合、エッジが強まることで作為的に見えたでしょう。眉にかかる、野暮ったさを感じるようなレングスが逆にモデルのムードを引き出していました。文句なしの月間賞、おめでとうございます。


AKI ONISHI
フリーランス
資生堂美容技術専門学校卒(美容歴5年)
バングの両端のカールや、ウエイト低め・短めのボブによるガーリーな女性像が明確で、モデルにもよく似合っています。その中で、バングをU字に切り込む要素はエッジが強過ぎそうなものの、広く、緩やかにラインを描いて肌を見せ、抜け感を伴わせることで良い塩梅に落とし込んでいます。これにより、芯の強さが感じられる点もすてきです。何より、色やメイクは極めてシンプル。その引き算がデザイン性を引き上げており、他の応募者も刺激を受けそうなストイックさです。ただし、根元の伸びが気になるのが残念。そこまで計算し尽くしてほしかったですね。


HIDEKA
une/HOUNE(東京都目黒区)
国際文化理容美容専門学校卒(美容歴17年)
サーモンピンクが、中性的な雰囲気のモデルが持つ女性らしさを程よく引き立てていて、オシャレ。肌の血色感や生っぽさも際立たせているようで新鮮でした。2色でバックとフロントを切り替える配色も挑戦的。一歩間違えると前後のデザインが分離してしまいそうなところを、ワイドバングをダブルバング風にサイド付近まで広げてピンクを効かせ、なおかつフロントの根元はブラックを配置することで、うまくまとめ上げています。束感の太さとウエットなスタイリングによって、髪が硬く、ギラついて見えた部分が意図的であったのかが疑問でした。


TOMOHIRO SAKAMOTO
VISAGE(千葉県市川市)
ハリウッド美容専門学校卒(美容歴22年)
モデルのピュアな魅力をうまく引き出した、レングス設定、髪の動かし方、ウエイト設定でした。3方向ともシルエットバランスが美しく、もみ上げの分量や前髪の散らし方もすてき。ショートバングというお題に対して、カーリーヘアで勝負すると、どうしてもライン感の印象は弱まってしまいますが、その中でも束感をしっかり出し、水平に近いラインでそろえることで、うまくバングをポイントとしてきかせていた点も好印象。月間賞にするかをかなり悩むほどでしたが、どうしても表面に入れた部分的なブラックの意図が分かりませんでした。


YUKO NONOGUCHI
SYAN(東京都渋谷区)
ル・トーア東亜美容専門学校卒(美容歴20年)
コケティッシュな雰囲気のモデルの表情とそばかすメイクの効果もあり、女性像の解像度が最も高い作品でした。顔周りは目元付近から切り込み、そこから風で自然に広がるような動きを付けた点も、女性像が生き生きとして見え、心地よささえも感じます。表面を短く切り、その内側に部分的にブラウンを配置したことで、3方向とも動かし方の違いによって髪の表情が変わり、良い意味で“狙わずとも”ヘアデザインを成立させていた点もさすがでした。1点、ブロンド部分がパサついて見える点がどうしても気になります。


AYA HOMMA
フリーランス
北海道理容美容専門学校卒(美容歴13年)
2色使いが潔く、アンダーのブラウンがデザインの締めとしてきいていて、レイヤーで長短を付けたスッキリとしたデザインにフィットしています。このシャギーのような毛先の薄さと、モデルの雰囲気によって平成感を宿した点もむしろ今っぽいです。フロントをウエットに仕上げたことで、前髪の短い部分の質感とも相まって、海水浴を楽しむヘルシーな女性像にも感じられるのですが、裾のふんわりとした動き・ストレートタッチの動きとなじまず、少々ベタつき過ぎているように思いました。


KEIJI MIKAWA
VISAGE(東京都中央区)
ハリウッド美容専門学校卒(美容歴25年)
高い位置にウエイトを設定し、上品さを併せ持つスタイルながら、前髪~耳後ろまで深めの前上がりのラインでつなげた点がエッジィで新鮮。トップの髪の下ろし方がやや作為的で気になりました。


MASAYA KOICHI
VISAGE(千葉県市川市)
早稲田美容専門学校卒(美容歴20年)
ショートバングは快活でキュートな印象になりやすいですが、ウエイトを高くし、色数を絞ることでレディライクに仕上げた点はさすが。洗練されていますが、あと一歩小市さんらしさが欲しかったです。


SAYAKA ONISHI
isi(兵庫県神戸市)
神戸理容美容専門学校卒(美容歴18年)
ほんのり濃淡を付けたヘアカラーや一部長く残した髪など、一つ一つの要素は強いのですが、エッジの出し方がさりげなく、良い意味で要素過多に感じません。髪がギラついて硬く見えた点が残念。


KOYA OKUBO
資生堂美容室(東京都中央区)
高津理容美容専門学校卒(美容歴12年)
レイヤーベースをウエービーに仕上げ、「軽さ×軽さ」を表現する中、バングの重さが程よくきいています。Y2Kのムードを感じる色も今っぽい! 左耳周りの動きが成り行きになっていました。


NANOKA TOBA
SHISEIDO(東京都港区)
福岡ベルエポック美容専門学校卒(美容歴13年)
裾はライン感が程よく残るよう軽くし、顔周りと自然につなげて、バングのライン感と絶妙なコントラストを付けている点が秀逸。似合ってはいるのですが、女性像の狙いが感じられません。


SAYURI SUDO
SHISEIDO(東京都港区)
資生堂美容技術専門学校卒(美容歴6年)
毛先の薄さが特徴的な前髪と、ブラウンがにじんで見えるような透け感のある顔周りが新鮮。左サイドは前後のデザインが分離し、ウエイト位置によって面長感が強調されているのが気になりました。


MAI SASAKI
佐々木美容院(岩手県花巻市)
盛岡ヘアメイク専門学校卒(美容歴22年目)
バングをかなりワイドに短く切ることで、フロントのタイト感とバックのボリューム感に遊びをきかせつつもうまくバランスが取れています。レングス設定によって肩周りに重さがたまり、やや窮屈な印象……。


SORA HIROSE
資生堂美容室(神奈川県横浜市)
福岡南美容専門学校卒(美容歴4年)
ネオンカラーによってバングのラインを強調、なおかつバックにも配色して前後をつないだ点はよく練られています。グラデーションカラーとスタイリング、人工的な色の要素がちぐはぐでした。