
若手ヘアデザイナーの育成とスキルアップを目指し、厳しい視点での評価を行っている『ヘアモード誌上コンテスト』。時代性があるか、テーマが反映されているか、シンプルに構成されているか、モデルに似合っているか──。これが、当コンテストの審査ポイントとなっている。自分の基礎力を見つめ直したい、力を試したいという方はぜひ挑戦してほしい。
恒例のテーマだからこそ、型にはまった作品が集まりがちなのですが、今回は出題文で掲げた「現代にも通用する」という点がよく意識されており、実験的な試みが見られた作品が多くて非常に興味深かったです。ハイトーンカラーでトレンド感を加えるのはもはや定番ですが、フィンガーウエーブのエレガント・クラシカルといった要素とは相反するものを掛け合わせつつ女性像を表現したもの。ウエーブそのものの緩急を操作することで、新鮮さや自分らしさを表現しようとする意欲が感じられたものなど、チャレンジングな作品が上位には見られました。
一方で、このテーマはフロント~サイドのデザインが軸となるからこそ、バックとのつながりを含め、360度の見え方を構成できているかが評価の分かれ目となりました。今回はショートヘアの作品が多かったこともあり、バックの骨格に対するフィット感や後頭部の補整の意識、耳後ろの毛量処理などに課題が見られたのは残念です。また、フロント周りの髪の透け感も気になりました。華やかな場への出席を想定するデザインだからこそ、お客さまが周囲の目を気にせず楽しめることも大切。自分が表現したいデザインやシルエットのバランスだけでなく、それを受け取る側の心理まで想像できてこそ、本当の意味で“ヘアデザイン”と呼べるのではないでしょうか。
新しさを追求することと、似合わせや心地よさを両立すること。そのバランスを意識した作品を次回は期待しています。
ヘアモード編集部
★はこれまでの月間賞獲得数


大久保洸哉 ★
KOYA OKUBO
資生堂美容室(東京都中央区)
高津理容美容専門学校卒(美容歴12年)
「これはフィンガーウエーブなのか?」と感じたほど、かなり崩したデザインであったため、最後まで順位を迷いましたが、挑戦心を踏まえて上位とさせていただきました。全体をクセ毛風に仕上げた点が、フィンガーウエーブにもこのような解釈があるのだな、と興味深かったです。特にフェイスラインの顔に張り付いた髪がオシャレ。フロント~バックのハネ感もリズミカルで、360度の見え方をつなぐ役割を果たすなど、計算してつくり込まれていました。1点、右サイドから見たときのシルエットはトップがつぶれて見え、バランスが悪く感じました。


深野結花 ★★
YUIKA FUKANO
SHISEIDO(東京都港区)
日本美容専門学校卒(美容歴18年)
まさかのビビッドなピンク! クラシカル・シックなイメージをはらむテーマなので、甘く寄せるためにピンクを使うことは想定内だったのですが、強さを感じる鮮やかなピンクとフィンガーウエーブを組み合わせ、芯の通った女性像を描き出した点がさすがでした。ウエーブ表現も緻密。シースルーにして今っぽさを狙うと、髪の薄さが気になるところですが、フロント中央はそれを全く感じません。ただし、バックのつくりが判断できず、横のシルエットから鑑みると、やや耳後ろの重さが処理し切れていない印象。ここが成り行きになっていた点が引っ掛かりました。


坂本朋広 ★★
TOMOHIRO SAKAMOTO
VISAGE(千葉県市川市)
ハリウッド美容専門学校卒(美容歴22年)
ひと目見たときに耳前のくるんとした髪の動きにきゅんとしました! ポイントとして効かせたい部分と、それ以外の引き算がよく考えられているからこそ、真っ先に目に留まったのだと思います。また、ウエーブをダイナミックにつくりがちなこのテーマで、あえて緩やかなウエーブにして抜け感を演出した点も高評価につながっています。ただし、ポイントとなる毛束の動き(表面やフロント周り)が硬く、作為的。加えて左サイドをくっきり分けたことで、フロントとバックの要素が分離して見えたため、この順位とさせていただきました。


鳥羽菜花 ★
NANOKA TOBA
SHISEIDO(東京都港区)
福岡ベルエポック美容専門学校卒(美容歴12年)
ウエーブから根元の黒がのぞくバランスが秀逸で、抜け感を伴って仕上げた点が今っぽい。しかし、今回は新しさという部分で他と比較すると弱く、のっぺりとした後頭部のシルエットが惜しかったです。


本多美羽
MIU HONDA
VISAGE(千葉県市川市)
長岡美容専門学校卒(美容歴6年)
バックをひとクセあるループ状にまとめ、フロントのつくりだけでなくトータルでデザインを構成しようという気概が感じられました。ウエーブのダイナミックさに対して内側の透け具合が残念。


三河圭司 ★
KEIJI MIKAWA
VISAGE(東京都中央区)
ハリウッド美容専門学校卒(美容歴25年)
体の入り方を含め、モデルが美しく見える角度が計算されています。ブロンドとブラウンの構成も攻めの塩梅がちょうどよいのですが、この対比によって剃り込みの透け感が際立っています。


橘 裕花
YUKA TACHIBANA
VISAGE(千葉県船橋市)
長岡美容専門学校卒(美容歴6年)
シルエットを360度から美しく見えるよう、よく意識してつくってくださったのが伝わります。ただ、引き出した毛束の動きが硬く、洗練されていません。特に左右の耳前の動きが気になりました。


佐々木麻衣 ★
MAI SASAKI
佐々木美容院(岩手県花巻市)
盛岡ヘアメイク専門学校卒(美容歴22年)
バックの膨らみとフィンガーウエーブというクラシカルな要素に対して、正面から見たときのエアリーなシルエットの対比は遊びが効いていて面白いのですが、少々要素が分離して見えました。


小市匡也
MASAYA KOICHI
VISAGE(千葉県市川市)
早稲田美容専門学校卒(美容歴20年)
ダイナミックな動きがバランスよく、シニヨンの高さもモデルに似合う位置で設定できていますね。ブロンドのドライな質感がパサついて見え、他の応募作と比較すると新しさも不足していた印象です。