
トレンドサロンとして、「パーマ」をデザインの核に置き、さらに、「apishパーマアカデミー」を通して同業者に知見をシェアし続けている『apish』。同店が行う「薬剤検証」について、その方法や位置づけを見ていこう。
ホットパーマが世に出現して間もない頃から、サロンのメインメニューとして展開してきた『apish』。同店によれば、「やさしい薬剤を使用しても熱の力でしっかりかけることができる」のが魅力だという。『apish』の方法論では、ワインディングの仕方によって仕上がりのクオリティーが大きく変わるコールドパーマに比べて、ホットパーマの巻き方は非常にシンプル。その分、薬剤の選び方がデザインの質に直結するため、日々、サロンで取り扱っているものだけでなく、世の中のパーマ薬剤のスペックに目を通し、検証を重ねることが大切なのだ。

現在、実質的なケミカルのリーダーとして、検証を一手に担っているのが、銀座店スタイリストの藤野佑成さん。藤野さんは新しい薬剤の情報をキャッチしたら、ウイッグでの検証(流れは左ページ参照)を行い、数字や専門用語を使わない、「分かりやすい」言葉で全スタッフに共有している。「ケミカルに苦手意識を持つスタッフは一定数、必ずいます。だからこそ、ただ結果を知らせるのではなく、『この薬剤でこんなデザインがつくれる』と具体的な言葉に落とし込むことが重要なんです」(藤野さん)。 そして、デザイン以上に重要なのが、「NGライン」の見極め。「この状態になったらパーマの要望があってもお断りする」という基準を薬剤ごとに明確にするのも、ケミカル担当の大切な役目なのだ。 高単価だから、パーマサロンとして求めてきてくれるから、といってパーマを無理やり売りつけるのではなく、お客さまに長く、ヘアデザインを楽しんでもらいたい。熱心な検証の裏には、『apish』のパーマに対する熱い思いが詰まっている。
図は、『apish』の(サロンワーク以外の)業務内容を組織構成に合わせて並べたもの。教育事業部の中に「パーマ」と「ヘアカラー」のセクションがある。集団で検証を行う、いわゆる「ケミカルチーム」はないが、各セクションには両技術を総括したケミカル知識のあるスタッフが必ず配備され、皆を代表して実験を行う。


現在、同店の薬剤検証を担っているのは銀座店スタイリストの藤野佑成さん。彼こそ、同店のケミカルブレーンといえる。
同店が行っている薬剤検証はどのようなプロセスで進められているのか。その代表的な例を紹介。必要なだけの検証を、効率よく進めていき、速やかに現場にフィードバックする流れを見てみよう。

新しいパーマ剤が発売されたら、資料を読み込んでスペックを細かくチェック。既存、新作を問わず、同じブランドの中にスペックの数値が1~2段階程度異なるものがないかを探す。
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検証したいパーマ剤を発注。先に調べた通り、単体ではなく数値の近い薬剤同士を2~3種類セットで取り寄せる。さらに、検証の前に左右でそれぞれ「健康毛」「ブリチ毛」に分かれたウイッグを用意しておく。
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薬剤による違い(左右) 素材による違い(前後)

検証用ウイッグの左右それぞれから2~3束、比較する薬剤の数の毛束を取って塗布。ワインディングは、全て毛先から2~3回転の平巻き。回転数、加温や放置時間の設定は、その回では全て揃える。条件を統一することで、仕上がりを比較しやすくする。また、同じ実験を、①薬剤単体、②毛先に処理剤塗布、③薬剤ミックス(パターンはその時々で異なる)と、条件を替えて3度行う。
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まとめた資料は、同店テクニカルディレクター(兼教育事業部長)の宮下浩一郎さんが1度チェック。

検証して得られた結果を藤野さんがデータとして蓄積して、分かりやすい言葉に変換するほか、できたカールがどんなヘアデザインに生かせるかを考案。スタイルのつくり方を撮影し、教則本さながらに取りまとめる。これらの情報は、業務用チャットのサーバー上にアップされていき、パーマの情報が欲しいスタッフがいつでも見れるようになっている。
新規のお客さまがパーマを希望する場合は、必ず、カットした毛束を使ってバックルームで随時テストカールを行う。それにより、パーマをかけていいのかどうかを判断。お客さまの多くは自分の施術履歴を覚えていないことがあるため、こうした日々の取り組みが必要になるのだ。
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『apish』では、パーマとカットで共通して使用する「三日月セクション(ぼんのくぼ付近の小さな部位)」を中心としたセクショニングがある。前項、パーマ検証後に考える応用デザインはこの理論にのっとってつくられており、サロンワークや撮影、「apish パーマアカデミー」など、外部に対する教育の場で、検証結果を広く生かすことができる。
※本記事は、月刊『HAIR MODE』2026年3月号から転載した記事です。