
若手ヘアデザイナーの育成とスキルアップを目指し、厳しい視点での評価を行っている『ヘアモード誌上コンテスト』。時代性があるか、テーマが反映されているか、シンプルに構成されているか、モデルに似合っているか──。これが、当コンテストの審査ポイントとなっている。自分の基礎力を見つめ直したい、力を試したいという方はぜひ挑戦してほしい。
成人式のヘアデザインは、もちろん美しくあることが大前提ですが、振袖との調和や一日を通して崩れない機能性まで求められ、通常のサロンワークとはまた異なる難しさがあります。今回は、単に「成人式らしい華やかさ」を表現するのではなく、どんな振袖を着るのか、その女性がどんな気持ちでハレの日を迎えるのかまで想像しながらデザインされているかを重視しました。
デザイン的に印象深かったのは、バックを主役にしながら、フロントの見え方まで計算された作品が多かったこと。前髪や顔周りにポイントを設けたり、正面から見たときのシルエットや飾りのバランスを調整したりと、3方向からの美しさを意識した工夫が感じられました。また、昨今はタイトなデザインやカチモリ風のスタイルが注目されていますが、今回はウエーブやカールのやわらかさを生かし、既存のトレンドをなぞるだけではない提案も見受けられた点が興味深かったです。一方で気になったのは、ヘアデザインと女性像、そして写し撮る表情の方向性が噛み合っていない作品が見られた点。成人を迎える世代特有の大人っぽさと初々しさを併せ持つ魅力を引き立てるのであれば、その二面性を含めてデザインを組み立てる必要があるでしょう。
今回は、ヘアデザイナーそれぞれの個性を宿した完成度の高い作品が多く集まり、月間賞、そして最優秀賞が誕生しました。次回もつくり手とモデルの“らしさ”が表現された作品を楽しみにしています。
ヘアモード編集部
★はこれまでの月間賞獲得数


塚原茉里奈 ★★★
MARINA TSUKAHARA
SHISEIDO(東京都港区)
東京マックス美容専門学校卒(美容歴8年)
バックのデザインが「アレンジ」というよりも大きなバレッタのようで、プロならではの手腕を存分に感じられる作品。斜めに結い上げる発想も斬新でした。また、前髪は程よい束感で抜け感を出しつつ、顔周りは薄く取って長短を付けた羽のようなデザインが軽やかで、オリジナリティーを感じました。ブロンドも一歩間違えれば着物に対して派手な印象になるところを、カットでのアプローチによって色そのものが持つやわらかさが強調され、品よくまとまっています。欠点を見つけることが難しいほど、よく計算され、塚原さんらしさを感じる作品でした。月間賞3つ獲得となり、最優秀賞となります。おめでとうございます!


佐々木麻衣 ★
MAI SASAKI
佐々木美容院(岩手県花巻市)
盛岡ヘアメイク専門学校卒(美容歴22年)
クセを生かしたようなふわふわのアレンジが、昨今のタイトなスタイルのはやりに対して新しく映りました。カラフルな飾り部分は、成人式の華やかさという面で気になりますが、お客さまが用意しやすいという点で魅力的。何より「今っぽい振袖とは?」と思いをはせたときに、自分らしさが光る振袖を着こなしたいという要望にフィットしそうだと感じました。カールを軸にしつつもコンパクトにまとめ、顔周りの繊細なつくり込みで今っぽさも忘れないという配慮もさすがです。パーマを生かすアイデアは今後増えそうなので、読者の参考としても◎。


小市匡也
MASAYA KOICHI
VISAGE(千葉県市川市)
早稲田美容専門学校卒(美容歴20年)
耳周りでお団子やノットをつくるようなデザインの場合、左右の高さをシンメトリーに合わせそうなところを、あえてずらした点に意外性がありました。ワイドバングのライン感もレディライクな表現にひと役買っており、ベストなレングス&束感です。また、リボン風アレンジなど、トレンド感も忘れずに加えられていますが、要素がちくはぐに見えずにまとまった印象を形成できているのは、描く女性像が明確だからこそ。真横から見ても逆サイドの髪が見えるのはかわいいのですが、左サイド耳後ろの毛先のハネ感が大味なのが気になりました。


坂本朋広 ★★
TOMOHIRO SAKAMOTO
VISAGE(千葉県市川市)
ハリウッド美容専門学校卒(美容歴22年)
中華風のアプローチで、三つ編みを用いてシルエットに遊びをきかせた点がこのテーマとしては面白く、トレンド感もあってすてきです。また毛先のハネ感や三つ編みによって、繊細ながらダイナミックさを表現していた点も新鮮。バックのパートの取り方が襟足部分と連動している点は、一見、要素過多に感じられますが、フロントやバックのつくりをスッキリ見せてメリハリを付けていることで、デザインの見せ場はよく整理されています。1点、正面から見たときの耳上の地肌の透けのみが気になります。全体が美しかっただけに、ここが悪目立ちしていました。


須藤小百合
SAYURI SUDO
SHISEIDO(東京都港区)
資生堂美容技術専門学校卒(美容歴6年)
ウエイトをサイドは高め、バックは低めにすることで、20代特有の大人っぽく見せたいけれど、かわいさも忘れたくないという気持ちによく寄り添っていると感じました。あと一歩、新しさが欲しいところ。


三河圭司 ★
KEIJI MIKAWA
VISAGE(東京都中央区)
ハリウッド美容専門学校卒(美容歴25年)
シルエットの面白さと質感の美しさが特徴の作品。顔周りの長短を付けた毛束も、はかない印象に合っています。しかし、第一印象が「崩れやすそう」でした。バックの構成ももっと知りたかったです。


小林太郎 ★
TARO KOBAYASHI
SHISEIDO(東京都港区)
山野美容芸術短期大学卒(美容歴15年)
ウエーブ×タイトのフロントのつくりが今っぽいです。この部分が抜け感を伴いながら美しく仕上がっていただけに、バックの毛束の引き出し方や飾りのバランスの取り方が細やかさに欠けた印象だったのが残念。


川元槙人 ★
MAKITO KAWAMOTO
資生堂美容室(東京都千代田区)
資生堂美容技術専門学校卒(美容歴13年)
ねじりを駆使して髪を上昇させ、アニメキャラ風のシルエットに仕上げた点が新しい! 小花のドライ感と胡蝶蘭、大人っぽい寒色系の髪色、キュートな表情など、ややまとまりのなさを感じました。


大久保洸哉 ★
KOYA OKUBO
資生堂美容室(東京都中央区)
高津理容美容専門学校卒(美容歴12年)
成人式ヘアにハイライトを取り入れた点は意外性がありました。しかし、ハイライトの要素と髪飾りの色みが大人っぽいため、高めのウエイト、笑顔の表情と女性像の狙いが分かりにくいです。


五十嵐 穫
MINORI IGARASHI
資生堂美容室(神奈川県横浜市)
東京モード学園卒(美容歴6年)
シルエットのバランスが大変美しいです。前髪の繊細な束感は今っぽいのですが、全体をクラシカルにまとめた点が、モデルのエレガントな印象にハマり過ぎて、時代性とのフィット感が気になりました。